平成21年10月21日

「官僚答弁」禁止の罠!


○ 今日は!国会対策委員長の漆原です。鳩山政権は、「官僚主導」から「政治主導」の政治をスローガンに掲げ、数々の提案をしています。マニフェスト至上主義のため若干の混乱はありますが、多くの国民は、「変革」の姿勢にエールを送っています。

○ その「政治主導」の一つとして、民主党の小沢幹事長は、国会法を改正して官僚の答弁を禁止する法案を、この臨時国会に提出しようとしています。小沢さんに指摘されるまでもなく、国会での審議が、政治家同士で語られることは大変に意義のあることだと思います。しかし、官僚の答弁を法律で禁止してまで封じ込めようとする意図が、どこにあるのかが問題です。
 これまで、議員が総理や大臣に答弁を求めても、自分で答弁をしないで官僚に答弁させるケースが、まま見られました。この点については指摘されるとおり決して好ましいものではありません。しかし、これは本来自ら答弁すべきところを官僚に答弁を「丸投げ」した総理や大臣の問題であって、答弁を命じられた官僚の問題ではないのです。従って「政治主導」の観点から言えば、官僚に答弁を「丸投げ」する総理や大臣の行為を禁止すれば済むことであって、官僚の発言を禁止するのは、全くの的外れです。
 老練な小沢さんが、こんな初歩的な思い違いをするはずがありません。

○ 結論から先に言うと、小沢さんは、内閣法制局長官の発言を法律上禁止したいのです。
 「国連決議さえあれば、日本の自衛隊がアフガンに上陸し、武力行使をしても憲法九条に違反しない」(注@)との小沢論文を憶えておられるでしょうか。この小沢見解には、歴代内閣法制局長官は、頑として首をタテに振らないのです(注A)。それならば、内閣法制局長官の国会答弁を禁止してしまえ、というのが小沢さんの本音です。内閣法制局長官の答弁が禁止された後の憲法解釈は、小沢さんの息のかかった総理や官房長官に委ねられることになります。これでは時の権力による憲法の解釈改憲が思いのままになってしまいます。
 憲法解釈が、時の政権の自由になる・・・こんな危うい日本になって本当に良いのでしょうか。日本には、憲法裁判所がありません(注B)。権力の暴走を一体誰が止めるのでしょうか。不十分ながら、内閣法制局長官が「憲法の番人」として、その任に当たって来たのです。
  憲法裁判所のない我が国においては、内閣法制局長官の「憲法の番人」としての役割を奪ってはなりません。

○ 「政治主導」→「官僚答弁の禁止」→「内閣法制局長官の答弁禁止」→「時の権力による解釈改憲」と連動してゆきます。私達は、「政治主導」の美名のもとに仕組まれた罠に嵌ってはならないのです。


注@ 雑誌「世界」07年11月号(小沢論文)
・「日本人は、決然としてテロと戦う決意と態度を持たなければなりません」
・「私は、国連の活動に積極的に参加することは、たとえそれが結果的に武力の行使を含むものであっても、何ら憲法に抵触しない・・・という考え方に立っています」
・「今のアフガニスタンについては、私が政権をとって外交・防衛政策を決定する立場になれば、ISAFへの参加を実現したいと思っています」
 
注A 内閣法制局の憲法解釈
<集団的自衛権>
 国際法上、日本が集団的自衛権を持っているのは主権国家として当然だ。しかし、自衛権の行使は日本を防衛するために必要最小限度の範囲にとどまらなければならず、集団的自衛権の行使は憲法上許されない。
<自衛隊の国連軍参加>
 その目的、任務が武力行使を伴うものであれば、参加することは憲法上許されない。

注B 憲法裁判所の設置
「憲法の番人」としての機能としては、私は、最高裁の違憲立法審査権も内閣法制局の存在も不十分だと考えています。
 この点について私は、憲法を改正して憲法裁判所を設置すべきであると考えています(私の試案を添付します)。

                          公明党国会対策委員長
              衆議院議員