資料1:「少年の更生・社会復帰支援拡充等に関する申し入れ」
少年の更生・社会復帰支援拡充等に関する申し入れ

少年犯罪の凶悪化、凶暴化を受けて、現行少年法改正案が十月三十一日、衆議院を通過し、五十一年ぶりの改正は確実となった。
 公明党は、少年法改正にあたり、少年の更生・社会復帰への支援拡充など速やかに実施すべき施策について、別紙のとおりに緊急提言を行うものである。
 特に、本提言にあるように、少年院出院後の保護システムの充実・強化など少年の更生・社会復帰への支援強化、雇用支援の拡充等の具体的施策について、政府において速やかに実施されるよう、ここに申し入れるものである。

平成十二年十一月二日

公明党青少年健全育成等プロジェクト
座長  浜四津 敏子
内閣総理大
森 喜朗 殿

資料2:「少年の更生・社会復帰への支援拡充等に関する緊急提言」
少年の更生・社会復帰への支援拡充等に関する緊急提言
―少年法改正にあたって実施すべき施策について―
平成12年11月2日 公 明 党

少年犯罪の凶悪化、凶暴化を受けて、現行少年法の51年ぶりの改正案が提案され、先月31日、衆議院を通過した。公明党は、少年法改正にあたって、少年の更生・社会復帰への支援拡充など速やかに実施すべき施策について、以下のとおりに緊急提言を行うものである。

 公明党は、今回の少年法の改正は、事実認定の適正化と被害者への配慮を盛り込んだものであり、また、犯罪の予防と国民的感情への相応の対応という側面も持っており適正なものであるが、これでこと足れりとするものではない。将来的には、犯罪予防、そして円滑な更生を図る観点から、時代の変化に対応した総合的な法整備を進めるべきであると考える。

そうした認識に立った上でわが党は、少年院出院後の保護システムの充実・強化など少年の更生・社会復帰への支援強化、雇用支援の拡充等について、以下のような具体的施策を政府において速やかに実施されることを強く要請するものである。

1 中間施設「グループホーム」制度の創設

  非行を犯した少年の社会復帰をスムーズに行い、また、その後の再犯を完全防止するため、自宅及び社会生活に戻るまでの中間施設として、現行の更生保護施設の機能・役割を大きく拡大したグループホーム制度を創設する。この施設には、少年の更生・社会復帰を支援する専門家・指導員を配置し、円滑な社会復帰と必要な教育などを行う。

また、この中間施設としてのグループホームは、本人や親の希望があれば虞犯少年(将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年)の受け皿としても有効に活用する。

さらに、グループホームの整備促進と的確な運営を支援するため、篤志家など個人、NPO等による整備・運営に対して、財政支援、税制優遇措置などを行う。

2 更生保護施設への支援強化

前項の中間施設「グループホーム」制度の創設までの経過的な措置として、当面、更生保護施設への公的支援を大幅に拡大するとともに、更生保護事業法の改正を行う。

主な改正事項、拡充施策は以下のとおり。

@   宿泊提供施設から更生改善教育のための処遇施設への法的転換(→犯罪予防更生法の改正)

A   宿所施設だけでなく、通所施設としても位置付ける

B   虞犯少年の受け皿及び地域の相談所としての役割も付け加える

C   民間更生保護活動振興事業基金(仮称)の創設

   ボランティアに全面依存している保護司、更生保護婦人会、BBS(Big Brothers and Sisters movement=青年のボランティア団体)の活動支援を行うための基金とする

D   委託費基準の見直し(入所者数制から定員制へ)

E   施設補助率の引き上げ(現行1/23/4

F   設備費を補助対象に加える

G   国や自治体設置施設の創設

H   少年専用施設の増設と専門職員の配置

I   多様な事業主体の参入

    更生保護法人、社会福祉法人、学校法人等多様な事業主体が相互参入して、更生を目指す少年を支える体制を強化する。

◇                   ◇

同施設は、明治以来、慈善事業として始まったものであり、平成7年に更生緊急保護法を廃止して新たに更生保護事業法が制定されたが、一貫して施設の体制は貧弱で公的支援の改善もなされていない。少年院仮退院や少年刑務所仮釈放となった少年の帰住先として、更生保護施設の役割は益々大きくなっている。少年犯罪は例外者が起こすのではなく、誰でも起こしうるという考え方に立った手厚い支援が必要である。

3 被害者・少年等協議プログラムの導入

 被害者の心のケアと少年の更生に高い効果が期待される「被害者・少年等協議プログラム」の導入を図る。少年院、少年刑務所を始め更生保護施設、「グループホーム」等でのプログラムとして幅広く採用されるのが適切である。

   被害者・少年等協議プログラムとは、被害者と少年双方の同意がある場合に、被害者と加害者、その身近にいる人々が直接対面し、非行の原因、被害の実情や影響について話し合い、その中で、少年が自己の行為を反省し、それをバネに更生するとともに、被害者の心の傷をいやしていくプログラムのことで、欧米では、司法外の制度として「修復的司法」(Restorative Justice)の理念のもと、両者間の調停(Mediation)の窓口を設けている例がある。

4 「社会奉仕命令」制度やいのちを育む作業の導入

保護処分(不処分の場合も含む)の一環として、精神面での成長に効果のある介護支援や福祉施設における活動など、一定の社会奉仕活動を義務付ける「社会奉仕命令」制度の導入を推進する。

また、入所中の作業、教育プログラムについて、農作業や動物の飼育など「いのちを育てる」作業に従事することや、福祉施設でのボランティア活動など、こころのケアに高い効果が期待できることで注目される活動を組み込むよう見直しを行う。併せて、保護者に対する教育プログラムの導入を検討する。

5 「少年サポートセンター」の拡充

 不良行為少年の補導段階で、個々の少年や家庭に対する助言・指導の充実を図るとともに、犯罪等の被害で心身のダメージを受けた少年の支援を強化するため、少年問題に関する警察の少年補導職員や少年相談専門職員を中核として、すでに全国(47都道府県)に設置している「少年サポートセンター」の機能を整備拡充する。また、地方公共団体に連絡協議会を設けるなど、自治体間の連携体制を構築する。

6 更生・社会復帰支援施設の整備と働く機会の確保

 法務省所管の少年鑑別所、少年院、医療少年院、少年刑務所、保護観察所、更生施設、厚生省所管の児童自立支援施設、児童養護施設、文部省所管の学校法人、労働省所管の公共職業安定所などのネットワークを整備拡充して、少年の完全な、かつ、一貫性ある更生・社会復帰を支援する。これらの施設の運営に万全を期すため、施設整備、スタッフ確保など積極的に支援する。

また、少年の職場、雇用の確保について、協力雇用事業者への公的支援や国、自治体、経済団体、企業等の協議機関の設置など、働く機会の保障に官民が協力して取り組む体制を構築する。

7 職員体制等の拡充

(1)   少年犯罪の実態や社会的背景の把握、少年の人権擁護等を図るため、少年犯罪専門捜査官の養成・適正配置を図る。

(2)   家庭裁判所の調査官の増員を図るとともに、少年審判が行われる施設の適正規模の確保等の設備改善を行う。

(3)   18歳未満の少年を収容する刑務所については、少年であることの特質を勘案し、現行の教誨・教育の充実に加え、教育の必修化を進めるなどの改善を図るため、監獄法から切り離し、独自の「少年刑務所法」を制定する。また、刑務官中心から法務教官との併用を図るなど職員体制の見直しを行う。

(4)   現行の医療少年院の職員体制の拡充を図るとともに、精神医学治療の必要な犯罪少年に対する専門的な医療を行うため、精神科医療専門の少年院を創設する。併せて、出院後の受け皿施設となっている精神病院等の受け入れ体制の拡充を図る。

8 心理学や精神医学の専門家の養成体制・配置の拡充

 近年、精神疾患が要因と考えられる少年犯罪が急増している。犯罪の予防、矯正・更生、さらには少年事件が社会全体に与える不安の解消を図る観点から、心の専門家の養成とその適正な配置は緊急の課題である。そのため、現在、厚生省、文部省、法務省等に分かれている養成・配置などの仕組みの統合、臨床心理士の身分保障等の総合的整備を進める。
座長  浜四津 敏子
内閣総理大
森 喜朗 殿