平成21年12月9日

国会論戦を終えて


 皆さんこんにちは!国会対策委員長の漆原です。12月4日、40日間の臨時国会が終了しました。開会当初の鳩山内閣の支持率は75%もあり、難攻不落の城のようにそびえ立っていました。国民の高支持率に支えられた、この鳩山城をいかにして攻めるか・・・正に野党国対の腕の見せどころです。鳩山内閣の12月7日現在の支持率は59%に急落しました。私達が、鳩山政権の問題点を厳しく追及した結果だと思っています。今や、民主党の議員の中からも、「こんな状況で来年の通常国会を乗り切れるのか」との声も聞こえてきます。
難攻不落の城に沢山の楔を打ち込みました。来年の通常国会こそ本番です。あくまでも是は是、非は非とする正々堂々の論戦を展開し、「夏の陣」の大勝利につなげたいと思っています。
今回は、国会で議論された鳩山内閣の問題点について紹介をします。


○ 景気・経済対策
 日本経済は、「デフレ」、「円高」、「株安」の三重苦に見舞われ、景気の二番底の危機に瀕しています。鳩山内閣は、デフレ宣言はしたものの、これにどのように対処するのか具体的な処方箋を全く示していません。第二次補正予算すら決定できない状態です。危機感もスピード感もなく「経済無策」、「鳩山不況」と言われる所以です。
 第二次補正予算の審議は来年の通常国会であり、予算が成立したとしても執行は3月以降となります。その間の景気・雇用・国民生活は一体どのようにして守るというのでしょうか。
 鳩山内閣は、前政権が用意した第一次補正予算のうち、2.9兆円の執行を停止しました。この「執行停止」を解除すれば、今すぐにでも「2.9兆円」を使うことが出来るのです。
 日本経済や国民生活は、来年の3月まで待つことが出来ないほど追い込まれています。「国民生活が第一」と言うのであれば、鳩山  内閣は面子にこだわらず、直ちに「第一次補正予算の凍結解除」の決定をするべきです。


○ 天下り問題
本年1月6日、当時民主党幹事長であった鳩山氏は、衆議院本会議の代表質問で「国民が最も怒っているのが官僚の天下りだ。なぜ官僚だけが特別に優遇され、天下り先が確保されるのか」と政府を追及。
 この幹事長の発言を受けて、前原氏や長妻氏らが予算委員会で「役所から(再就職の)斡旋を受ける、受けないにかかわらず、客観的事実として天下りがあれば、それは天下りだ」、「中央省庁の関与がなくても、OBの間でルーティーン化して、どんどん誘って、OBが数珠つなぎで天下っていくというケースを政府は認めるのか」などと、厳しく政府を追及しました。
 昨年3月、福田内閣が日銀総裁候補として元財務省事務次官の武藤敏郎氏を提示した際、民主党は「官僚依存、天下りだ」と反対し、日銀総裁は3週間も空席になったことを記憶されている方も多いと思います。
ところが、民主党は政権を取った途端、天下り人事に対する態度を一変したのです。鳩山内閣は、日本郵政社長に斉藤次郎氏、副社長に坂篤郎氏ら旧大蔵省のOBを選任し、更に人事官の同意人事については江利川毅氏の起用を求めています。
 斉藤氏は、旧大蔵事務次官、江利川氏は内閣府事務次官及び厚生労働事務次官を歴任しており、「ザ・官僚」そのものです。仮に旧政権がこのような人事を行ったならば、鳩山氏をはじめ民主党の皆さんは、目が飛び出るほど反対されたことでしょう。
 しかし、あれほど激しく「天下り禁止」の論陣を張られた前原氏や長妻氏も今や国土交通大臣、厚生労働大臣に納まってしまった。誰一人として反対の声をあげる人がいなくなってしまいました。大臣の職を賭してでも反対するくらいの覚悟を持った人は、一人もいないのですね。大変に残念なことだと思っています。
 更に重大なことは、11月6日に鳩山内閣が示した「天下り」の定義です。それによれば、「天下りとは、府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させることをいう。従って、公務員が、法令に違反することなく、府省庁による斡旋を受けずに、再就職先の地位や職務内容等に照らし適材適所の再就職をすることは、天下りには該当しない」とし、「府省庁」には、政務3役(大臣、副大臣、政務官)や官僚OBは含まれない、というのです(アンダーラインは筆者)。
 何の事はない。民主党の大臣、副大臣、政務官であれば、天下り人事はやり放題、官僚OBによる役職の“たらい回し”も、やり放題ということではありませんか。ここまでくると、「民主党よ驕るな!恥を知れ!」と叫びたくなるのも私一人ではないと思います。朝日新聞も「脱官僚・看板倒れ」、「天下り・ぶれた定義」との見出しのもとに「結局は有権者に聞こえが良い『天下りの禁止』は、自公政権を追い詰め政権交代を果たす為のスローガンでしかなかったと取られても仕方がない」(11月11日付)と厳しく指摘しています。


○ 鳩山献金疑惑問題
 鳩山氏は、6月30日に記者会見を行い、4年間で2100万円(年平均525万円)の偽装献金があったことを認めました。しかし、その後の東京地検の捜査では、偽装献金額は5年間で3億6000万円(年平均7200万円)以上であったことが判明しました。ケタ違いの偽装額です。
 何故偽装をしたのか、誰のお金なのか、その使途は何か・・・鳩山氏からの説明は全くありません。この件については12月に会計担当の秘書が起訴されると聞いています。「総理の会計担当秘書の起訴」という重大な事態に、総理はどのように対応されるのでしょうか。
 又、同じく地検の捜査では、5年間で9億円の金が、実母から鳩山氏に渡されたことも明らかになりました。
 この9億円が母親からの贈与であったとすれば、鳩山氏は4億3600万円の贈与税を払わなければなりません。会計担当者は、  借入金だと主張しているようですが、借用書の有無、利息の有無、返済の事実の有無によっては、贈与と是認されることも十分にあり得ます。この件も、「総理の巨額脱税問題」へと発展する可能性があります。 
 鳩山総理は、これまで政治とカネの問題については、厳しい発言をされてきました。
@ 鈴木宗男議員秘書逮捕に関し「私は以前から鈴木議員に辞職を求めてきたが、議員の分身といわれている会計責任者の逮捕は議員本人の責任であり、改めて強く求める」(H14.5.2.夕刊フジ)
A 「私は政治家と秘書は同罪と考えます。政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、しばしば、あれは秘書がやったこととうそぶいて、自らの責任を逃れようとしますが、とんでもないことです」、「秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきなのです」(H15.7.23鳩山氏メルマガ)
B  加藤紘一元自民党幹事長の秘書は、脱税容疑で逮捕された際、「もし鳩山由紀夫の秘書が同じ事を行っていたとすれば、私はすぐに国民の皆さんに謝罪を申し上げ、国会議員のバッジを外す」と述べています。
 しかし、自分の事になると「あれは秘書がやったことで私は全くわからなかった」、「信頼していた秘書に裏切られた」、自身の「責任の是非に関しては、捜査が今進行しておりますから、そこに委ねたい」(11月4日衆議院予算委員会)と繰り言と逃げの一手です。だらしないですね。
 加藤氏は、自ら責任を取り、議員辞職をされました。鳩山氏もこの際、潔く、議員バッジを外すぐらいの気概を示されたらどうでしょうか。


○ 普天間基地移設問題
・ 衆議院総選挙中の鳩山発言(8月17日党首討論会)・・・
「基本的には一番いいのは海外に移転されることが望ましいと思っておりますが、最低でも県外移設が期待される」
・ しかし10月29日の代表質問に対する答弁では、「アジア太平洋地域におきましては、いまだに不安定な要因がある」、「こういう中で沖縄におります米軍を含む在日米軍の抑止力というのも、まだ我が国の安全保障において必要なものだと理解をするべきだ」、「在日米軍の再編について、こういった安全保障上の観点も踏まえて、過去の日米合意というものもある、この経緯を慎重に検証する必要がある」、「検証を行いながら、沖縄の方々の思いをしっかりと受けとめていきたい」と大後退!
 岡田外務大臣は、米軍嘉手納基地への統合論、北澤防衛大臣は日米合意論と、閣内はバラバラで閣内不一致の極みという状態です。更に外務大臣は「公約と選挙中の発言とはイコールではない」と全く無責任な発言。
・ 普天間基地の移設問題については、対米国・対沖縄県民・対三党連立の問題へと発展し、内閣は混迷の度を深めています。
 この問題について鳩山総理は「日米合意も重い、沖縄県民の思いも重い、三党連立も重い」などと、いたずらに決断を先送りしていることが、混迷に一層の拍車をかけています。いたずらに結論を先送りすることは、日米関係においても、沖縄県民にとっても百害あって一利なしです。
 私達は、年内一杯に結論を出すことを鳩山総理に強く求めています。


○ 強行採決による強引な国会運営
  現政権は野党時代、前政権が強行採決をしたと言って批判をしてきました。
  しかし、自分達が政権を取るや、手のひらを返したように強行採決を繰り返してきました。そして鳩山新政権で初めて成立した法案(モラトリアム法案)が強行採決によって成立したということは、何とも皮肉なものと思わざるを得ません。
 国会は言論の府です。圧倒的与党の数の暴力によって野党の言論が封殺されるようなことは断じて許すことができません。
 尚、20日未明の衆院本会議でモラトリアム法案が強行採決された際、公明党が退席した理由について、説明させて頂きます。
  公明党は同法案に反対なのではなく、基本的に賛成です。しかし、採決の前提として法案の問題点を議論するための十分な審議が必要です。
  当初、与野党間では11月18日、19日、20日と3日間の審理をして、20日の採決を決めていました。しかし民主党は急遽19日の午前中で審議を打ち切り、委員会での採決と本会議への緊急上程を要求しました。3日間の審議日程を1日半で終わらせようというのです。これは野党の言論を封殺する「民主党のご都合主義」で、同法案の審議時間を不当に奪う行為でした。
  巨大与党の数による横暴に対抗し、“言論の場”を確保するには、残念ながら退席して国民にアピールするしか手段がありませんでした。仮に、公明党が本会議に出席していたら、与党は「公明党も出席して円満採決した」と言ったでしょう。出席すれば、与党に利用されます。そうした横暴を国民に訴える為、公明党はやむを得ず本会議採決を途中退席したのです。この点は是非国民の皆様にご理解いただきたいと思います。実際、公明党が退席した事で、マスコミも一斉に与党の強行採決を批判し、民主党も軟化しました。その結果、補充質問の形で審議時間を確保することになったのです。


○ 逃げる鳩山首相
私達は今国会で@党首討論の開催、A日米交渉・APECの国会報告、B予算委員会での集中審議の開催を求めてきました。しかし、鳩山首相は、全部拒否をしました。
 国会開催中に一度も党首討論が行われなかったのは始めてです。政権交代後初の国会ですから、国民の期待も大きかったのです。
 又、デフレ、円高などの景気経済問題について政府がどのように対処しようとしているのか、首相の政治とカネの問題についても真実は一体どうなっているのか・・・等、予算委員会で尋ねたいことは山ほどあります。これら国民の強い要望に全く応えようとせず、わずか4日間の延長で国会を閉じてしまった与党の対応には強い憤りを感じます。
 「鳩山献金疑惑隠し」と批判されてもやむを得ないと思います。


○ 楔を太く、深く!
 予算の編成を含む景気・経済対策、普天間基地移設問題、鳩山献金偽装問題と鳩山内閣は正に正念場を迎えます。
 通常国会では、「楔を太く、深く」をモットーに頑張りたいと思います。

 本年は大変にお世話になりました。心より感謝を申し上げます。皆様の益々の御健勝と御活躍をお祈り申し上げ、国会の報告とさせて頂きます。


                          公明党国会対策委員長
              衆議院議員