平成21年11月17日

言葉の軽さは政権の命取り(その1)


★全国の皆さん、こんにちは!国会対策委員長の漆原です。政権交代後始めての総理の所信演説、各党の代表質問、予算委員会での質疑を終え、論戦の舞台は各委員会へと移ってゆきます。

これまでの論戦を通じて、鳩山総理の「言葉の軽さ」、「発言のブレ」が明確になりました。特に、「普天間基地移転問題」、「天下り問題」、「財源論」、「政治とカネ」といった重要課題に関する発言のブレは、到底看過できない問題です。「綸言汗の如し」です。総理の言葉の軽さ、発言のブレは、政権の命取りにもなりかねない問題です。
鳩山内閣の支持率は、依然として高い水準を維持していますが、メディアの論調にも変化の兆しが見られ、総理の「黄金のネクタイ」も少し色褪せてきたのかなという感じがします。

以下、クルクル変わる鳩山発言の事例を紹介したいと思います。

<普天間基地移転問題>
・  衆議院総選挙中の鳩山発言(8月17日党首討論会)・・・「基本的には一番いいのは海外に移転されることが望ましいと思っておりますが、最低でも県外移設が期待される」
・  しかし10月29日の代表質問に対する答弁では、「アジア太平洋地域におきましてはいまだに不安定な要因がある」、「こういう中で沖縄におります米軍を含む在日米軍の抑止力というのも、まだ我が国の安全保障において必要なものだと理解をするべきだ」、「在日米軍の再編について、こういった安全保障上の観点も踏まえて、過去の日米合意というものもある、この経緯を慎重に検証する必要がある」、「検証を行いながら、沖縄の方々の思いをしっかりと受けとめていきたい」と大後退!
 岡田外務大臣は、米軍嘉手納基地への統合論、北澤防衛大臣は日米合意論と、閣内はバラバラで閣内不一致の極みという状態です。更に外務大臣は「公約と選挙中の発言とはイコールではない」と全く無責任な発言。これでは、沖縄県民が怒るのは無理もありません。

<天下り問題>
・  本年1月6日、当時民主党幹事長であった鳩山氏は、衆議院本会議の代表質問で「国民が最も怒っているのが官僚の天下りだ。なぜ官僚だけが特別に優遇され、天下り先が確保されるのか」と政府を追及。
 この幹事長の発言を受けて、前原氏や長妻氏らが予算委員会で「役所から(再就職の)斡旋を受ける、受けないにかかわらず、客観的事実として天下りがあれば、それは天下りだ」、「中央省庁の関与がなくても、OBの間でルーティーン化して、どんどん誘って、OBが数珠つなぎで天下っていくというケースを政府は認めるのか」などと、厳しく政府を追及しました。
 昨年3月、福田内閣が日銀総裁候補として元財務省事務次官の武藤敏郎氏を提示した際、民主党は「官僚依存、天下りだ」と反対し、日銀総裁は3週間も空席になったことを記憶されている方も多いと思います。
・  ところが、民主党は政権を取った途端、天下り人事に対する態度を一変したのです。鳩山内閣は、日本郵政社長に斉藤次郎氏、副社長に坂篤郎氏ら旧大蔵省のOBを選任し、更に人事官の同意人事については江利川毅氏の起用を求めています。
 斉藤氏は、旧大蔵事務次官、江利川氏は内閣府事務次官及び厚生労働事務次官を歴任しており、「ザ・官僚」そのものです。仮に旧政権がこのような人事を行ったならば、鳩山氏をはじめ民主党の皆さんは、目が飛び出るほど反対されたことでしょう。
 しかし、あれほど激しく「天下り禁止」の論陣を張られた前原氏や長妻氏も今や国土交通大臣、厚生労働大臣に納まってしまった。誰一人として反対の声をあげる人がいなくなってしまいました。大臣の職を賭してでも反対するくらいの覚悟を持った人は、一人もいないのですね。大変に残念なことだと思っています。
 更に重大なことは、11月6日に鳩山内閣が示した「天下り」の定義です。それによれば、「天下りとは、府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させることをいう。従って、公務員が、法令に違反することなく、府省庁による斡旋を受けずに、再就職先の地位や職務内容等に照らし適材適所の再就職をすることは、天下りには該当しない」とし、「府省庁」には、政務3役(大臣、副大臣、政務官)や官僚OBは含まれない、というのです(アンダーラインは筆者)。
 何の事はない。民主党の大臣、副大臣、政務官であれば、天下り人事はやり放題、官僚OBによる役職の“たらい回し”も、やり放題ということではありませんか。ここまでくると、「民主党よ驕るな!恥を知れ!」と叫びたくなるのも私一人ではないと思います。朝日新聞も「脱官僚・看板倒れ」、「天下り・ぶれた定義」との見出しのもとに「結局は有権者に聞こえが良い『天下りの禁止』は、自公政権を追い詰め政権交代を果たす為のスローガンでしかなかったと取られても仕方がない」(11月11日付)と厳しく指摘しています。

<政治とカネ>
・  鈴木宗男議員秘書逮捕に関し「私は以前から鈴木議員に辞職を求めてきたが、議員の分身といわれている会計責任者の逮捕は議員本人の責任であり、改めて強く求める」(H14.5.2.夕刊フジ)
・  「私は政治家と秘書は同罪と考えます。政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、しばしば、あれは秘書がやったこととうそぶいて、自らの責任を逃れようとしますが、とんでもないことです」、「秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきなのです」(H15.7.23鳩山氏メルマガ)と誠に勇ましく明解なのです。
・  しかし、自分の事になると「あれは秘書がやったことで私は全くわからなかった」、「信頼していた秘書に裏切られた」、自身の「責任の是非に関しては、捜査が今進行しておりますから、そこに委ねたい」(11月4日衆議院予算委員会)と繰り言と逃げの一手です。

<政治資金規正法改正について>
・  8月17日党首討論会で、秘書など会計責任者が収支報告書に虚偽記載を行った場合には、国会議員の公民権を停止するなどの政治資金規正法の改正をすべしとの太田公明党代表(当時)の提言に対し鳩山氏は、「政治をクリーンにすることは大変いい話だ。基本的に党として前向きに対処すべきだ」と答弁をしました。
・  しかし、政権交代後の10月28日衆議院本会議での井上幹事長の代表質問では、「政治資金規正法改正の問題に関しては、各党各会派におきまして、積極的に御議論頂いて、成案を得られるように、お互い努力をすべきだと認識しております」とトーンダウンし、総理、党首として指導力を発揮する姿勢を全く示しませんでした。

まだまだ事例はありますが、長くなりますので、今回はこの程度にし、後日(その2)で述べたいと思います。


                          公明党国会対策委員長
              衆議院議員