平成18年7月11日

「取り調べの可視化」が前進

主張/「取り調べの可視化」が前進/東京地検が今月から試行を開始
 『公明の主張が実る』
 逮捕された被疑者がどのような取り調べを受けて罪を認めたのか――その過程を録音・録画することによって自白の強要があったかどうかを明確にする「取り調べの可視化」が、今月から東京地検で試行されている。
 警察官による取り調べではなく検察官の取り調べに限定され、どの事件の取り調べを可視化するかも検察官の裁量に任されてはいるが、これまで可視化「絶対反対」を貫いてきた検察当局の決断だけに、刑事司法の透明化にとって大きな前進となる。
 検察が試行に踏み切った背景には、3年後の2009年からスタート予定の裁判員制度がある。最高検察庁は国民から無作為に選ばれる法律の素人である裁判員に対し、被告人の自白が強要ではなく任意であることを分かりやすく立証する方策を検討した結果、「取り調べの可視化」の試行に踏み切った。強要かどうかはビデオを見ればすぐに分かるからだ。1年半の試行の後、正式な導入の可否が検討されるが、杉浦正健法相が「とりあえず、裁判員制度対象事件について試みにやってみるが、私は(取り調べの可視化は)導入するのは不可欠だと思っている」と国会で答弁しているように、導入する方向での試行といえよう。
 「取り調べの可視化」は刑事司法改革にとって“見果てぬ夢”のようなテーマだった。それが検察による試行の実施まできたことは、裁判員制度という“追い風”による幸運だけではなかった。杉浦法相が6月5日の衆院決算行政監視委員会第4分科会で「公明党がマニフェストにも(可視化を)うたわれて検討を求めておられたことはよく承知している。自民党には議論はあるがマニフェストには載っていない。友党である公明党がマニフェストに掲げられたことは大変意義深い」「それ(可視化の試行)によって、公明党がマニフェストに掲げられたことが実現に向かうというふうに私は理解している」と述べたように、公明党の長年の努力があったことも忘れられてはならない。
 取り調べを行う警察と検察がこれまで「可視化」導入を拒否してきた背景には、自白偏重の捜査姿勢があった。おとり捜査や潜入捜査、通信や会話の傍受といった多彩な捜査手段が認められ、被疑者逮捕の時点で十分な証拠収集が可能で、あえて自白させる必要のない刑事司法制度をもつ欧米諸国と異なり、日本の刑事司法ではどうしても自白偏重の捜査になると指摘されてきた。
 しかし、自白させようとするあまり、捜査官が威圧や利益誘導といった違法・不当な取り調べを行い、虚偽の自白に追い込まれることが少なくなかった。
 『警察にも拡大を』
 戦後、こうした意に反した自白で死刑を言い渡されながら再審で無罪になるという裁判例も続いたことから、密室での取り調べは厳しい批判にさらされてきた。「1人の無実の者をも処罰してはならない」という刑事司法の鉄則からしても「取り調べの可視化」は必要不可欠だ。
 公明党の漆原良夫法務部会長(衆院議員)は、「可視化」試行について「今回の検察の試行が、やがて警察の取り調べの可視化を実現する風穴になる」と高く評価。さらに「おとり捜査など捜査手段の極端な拡大をすることなく可視化を実現することが大事だ」との見解を示している。
(平成18年7月8日付け公明新聞より転載)