令和3年9月22日
【建設アスベスト給付金制度の創設
 
― 画期的救済制度の実現!菅総理のレガシー ―

 

○5月17日最高裁判所小法廷は、建設アスベスト損害賠償請求訴訟の判決で、国及びアスベスト建材を製造したメーカーの責任を認める統一的判断を示しました。
 この判決を受けて、与党建設アスベスト対策プロジェクトチームは、「建設アスベスト訴訟における未提訴の被害者に対し、・・・与党において、・・・建設アスベスト給付金制度(仮称)を創設する」ことを決め、さらに、原告団等と国(厚生労働大臣)との間に基本合意が締結され「国は、与党における法案化作業に積極的に協力する」ことを約束しました。
「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」は、このような経緯を経て令和3年6月9日に議員立法により成立しました。

〇従来の司法的解決方法(裁判)では、加害行為と被害との間の因果関係が証拠に基づいて厳格に主張立証される必要があります。しかし、建設関係従業者は、数十年にわたり建設作業現場で働き、数多くの石綿建材を使用してアスベスト関連疾患にり患していますが、どの建材にアスベストが含有されているのか知識を有していないため因果関係を主張立証することが極めて困難な状況です。因果関係の立証に膨大な時間を要し、訴訟遅延の大きな原因となっていました。事実、原告団の皆様は、今回の最高裁の判決を勝ち取るまでに13年の歳月を要して、7割近くの人が既に亡くなられています。
被害者の迅速な救済とは程遠いのが現状であり、司法的救済方法の限界と言わなければなりません。

〇アスベスト被害者の皆さんは、このように時間のかかる司法的救済方法ではなく、基金方式による給付金制度の実現を求めてまいりました。
 今回のアスベスト給付金制度は、アスベストに暴露して石綿関連の疾病を発症した労働者に、国が一定の給付金を支払うというものです。これまでの司法的解決方法のように、加害行為と被害との間の厳密な因果関係の主張立証は必要がなくなりました。
 このアスベスト給付金制度によって、アスベスト被害者の救済は、年単位から月単位へと劇的に短縮されます。

○アスベスト給付金制度の創設は、「被害者の迅速な救済の実現」という菅総理の強い指導力により、制度設計については、財務省、厚労省の積極的な協力があったことも指摘しておきたいと思います。

○なお、アスベスト被害者の損害のうち、国と建材メーカーの責任分担は、国2分の1乃至3分の1、建材メーカー2分の1乃至3分の2、と言われています。最高裁判決でその責任を指摘された建材メーカーの皆さんとは、残念ながら救付金制度の創設で和解することが出来ませんでした。従って被害者の皆さんは、その残余の損害の回復を求めるためにこれまでと同じく裁判という苦しい選択を余儀なくされています。1日も早く、国と同じく救付金制度の創設という解決方法で合意が出来ますよう祈っています。

建設アスベスト給付金制度の概要は、別紙の通りです

以上

2021年9月22日
公明党顧問 漆原 良夫