○ 過日、私の尊敬する先輩から次のようなメールが届きました。「自衛隊基地や空港の隣地など、国内の安全保障上、極めて重要な土地は安易に外国資本に購入させない。購入にあたっては厳しく審査するという法案について公明党が反対していると言われています。北海道など、豊富な水資源の土地を中国が買い占めているという報道もあります。外国からの土地の買い占めはもっと厳しくした方がいいと思いますがいかがですか?」という内容です。
先輩のご指摘の通り、外国資本による土地の買い占めは地方議会でも問題になっておりまして、「日本国民の安全保障や国土保全の観点から、外国資本等による土地の売買の規制や適切な体制を構築するための法整備に取り組む」べし、との意見書が国会に提出されています。
しかし、先輩。この法律では、外国資本による土地購入を止められないのです。
1、本法は、国民の不安や懸念の解消に応えていません。
例えば、調査の結果、]国の工作員による土地買取り事案が判明したとしましょう。この場合工作員の土地取得を阻止できるでしょうか。
@特別注視区域・・事前に届出をしないで土地を売却しても、事前届出違反の罰則の適用はあっても、民法上の効力に影響はありません。所有権は、有効に移転します。従って、工作員の土地取得を拒めません。
A注視区域、特別注視区域ともに・・売主たる土地所有者に対して「国による買い入れ要求」が可能。しかし、あくまでも任意であって、所有者に応諾義務はありません。従って、工作員に対する土地売却を防げません。
2、この法律は、調査と規制が連動していません。
・「調査」は「目的」達成のためになされ、その結果が「規制」として反映されなければなりません。
・前述した]国工作員の土地取得の事例のように、調査の結果が判明しても工作員に対する土地所得を阻止できません。これでは、何のための調査か趣旨不明です。
・本法の「目的」や「規制」と連動しない調査は、法的に無意味であるだけでなく有害です。
3、本法を推進する人や有識者会議の提言は、本法の存在が@不適切な土地の利用を抑止する効果がある、A国民の不安や懸念を小さくする「安全弁」である、と説明しています。
・しかし、本法所定の規制が、いわば「覚悟の工作員」に対して何ほどの「抑止力」となるというのでしょうか。
・せいぜい、調査対象として監視しているぞ、いつでも調査できるぞと言う程度の効力しかありません。
・他方、善良な市民にとっては調査の対象とされ、監視されることは、理由のない圧力になります。
4、本法は、第1条所定の「重要施設・・中略・・の機能を阻害する行為の用に供されることを防止するため」という目的を達成するには不十分だと言わざるを得ません。
時事通信は、(自民党国防族議員は)「怪しい土地をすぐに調べられるから公安調査庁も喜んでいる」と報じています。いずれにしても、「調査」を名目とした一大組織が出来上がります。私は、こちらの独走の方が心配でなりません。
○私の「重要土地等調査法案」に対する考えを述べさせて頂きました。ご意見を頂戴できれば幸いです。
コロナ禍の折、先輩のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
以上
2021年3月12日
公明党顧問 漆原 良夫