今日は! いよいよ師走。皆さんお元気でお過ごしでしょうか。
先日、NHKから −NHKスペシャル「証言ドキュメント 永田町 権力の興亡」(放送予定12月29日、21時)−という番組について取材を受けました。私の収録時間は1時間超でしたが、何分にも証言者が安倍総理や与野党の幹部と、多くの人が予定されているため、実際の放映時間は瞬間かもしれません。
私に対する質問の主な内容は、自公連立の政治的意義、連立の困難さ、それをどう乗り越えたのか、などが中心でした。
<安全保障関連法について>
○ 集団的自衛権の行使容認を目指す、安倍総理の意向をはじめて聞いたのは何時で、どう感じたか。
・ 安倍総理から公明党に対して、集団的自衛権の行使容認を目指すとの意向を示されたことはありません。
・ 「集団的自衛権の行使容認に向けて憲法の解釈を変更したい」との総理の考えは、2012年政権奪取直後、「安保法制懇」を再開した段階で知りました。
・ 公明党は、集団的自衛権の行使は憲法解釈上認められないという考えです。
従って自公協力して、ようやく政権を奪還したのに「厄介なことになった!」と言う思いが実感でした。この認識は、政権奪還に苦労した当時の自公の幹部に共通した想いでした。
お名前は伏せておきますが、当時ある自民党の幹部の方が、内閣官房副長官の加藤勝信氏、自民党国対委員長の佐藤勉氏、公明党国対委員長の私、の三名を呼んで次のように話をしてくれました。「与党連立はあるが、野党連立は無い。公明党は、自民党が野党に転落したときでも、一緒に泥をかぶって政権奪還に協力してくれた。ところが政権を奪還したとたんに、公明党さんが一番嫌がっている憲法9条の解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認するなど、連立の信義に反する。加藤さんは、安倍さんと親しいのだから、このことをよ〜く安倍さんに言っておくように」と釘を刺しておられました。私も、このご意見に全く同感です。
○ 党として集団的自衛権の行使容認を受け入れた理由は。
・ そもそも、我が党が集団的自衛権の行使を受け入れたと言う事実はありません。
・ メデアの皆さんは、平和安全法制について「集団的自衛権の行使を容認した平和安全法制」と形容詞をつけて呼んでいます。この表現の仕方は間違いです。
・ 自衛権には、集団的自衛権と個別的自衛権の二種類があります。日本政府の憲法解釈では、我が国は、個別的自衛権の行使は許されるが、集団的自衛権の行使は許されないとされています(昭和47年政府の統一見解)。
その区別は、武力行使の目的によって区別されます。即ち、集団的自衛権は、「他国の防衛」を目的とした武力行使であり、個別的自衛権は「自国の防衛」を目的とした武力行使です。
平和安全法制における武力行使は「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合に、これを排除するために必要最小限度で行われる実力行使です。
従って、平和安全法制における武力行使は、「自国防衛」のための実力行使であり、「他国防衛」を目的とした集団的自衛権による実力行使ではないことは、明白です。
○ 支持者に対してどう説明し、理解を求めたのか。
・ 平和憲法9条は、「わが国が、よその国を侵略する事はしない。しかし、よその国から侵略された場合には、わが国を守るために必要最小限度の実力行使をする事は許るされる」と言う立場です。
・ 北朝鮮のミサイル発射による日本海の状況、中国による尖閣問題など、日本を巡る安全保障環境は著しく悪化しています。
このような状況を踏まえると、@国民の生命と安全を守るために日米防衛協力の実効性を高めること、 A隙間の無い防衛体制を構築して抑止力を高め外部からの攻撃を未然に防ぐこと、が必要と考えます。
このための法整備が、平和安全法制です。
・ 平和安全法制における武力行使は、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段が無いときに、必要最小限度の実力行使として許容されたものです。従って、あくまでも「自国防衛」を目的とした個別的自衛権の範囲内であり、「他国防衛」を目的とした集団的自衛権ではありません。
<2017年解散総選挙について>
○ 森友、加計、改竄などの局面で政府や総理の対応をどう見ていたか。
・ 一連の行政文書の「改竄、廃棄、隠蔽問題」は、行政府が立法府を1年間も騙し続けてきたということです。憲政史上稀に見る不祥事であり、民主主義の根幹を揺るがす大問題です。
・ この問題を立法府から見た場合、国会の「行政監視機能」が、蔑ろにされたと言うことです。
国会には、内閣の行政執行を監視すると言う大きな権能と責務があります。しかし、その判断の基礎となる行政文書が「改竄、廃棄、隠蔽」されたのでは適正な判断が出来ません。
国会が「行政監視機能」をどうやって果たすか、与野党を超えて国会に突きつけられた重要な課題です。
<この7年で自公連立や日本政治はどう変わってきたか>
・ 今年の10月5日、自公連立政権は20年の佳節を迎えました。自公の連立は、日本の政治の安定に大きく寄与したと思います。
・ 政治の安定には、「数の安定」と「質の安定」があります。先ず「数の安定」ですが、政権の安定無くして大きな仕事は出来ません。二度にわたる消費税率の増税、平和安全法制、テロ等準備罪、特定秘密保護法など、国民に不人気な法案でも、国家100年の大計の観点から成立させました。
・ 次に「質の安定」ですが、自民党政治に国民目線の公明党の政策が加わることによって、政策のウイングが広がります。幼児教育・保育の無償化、軽減税率の導入、平和安全法制で武力行使に平和主義の歯止めをかけたことなどが挙げられます。
<長期政権の驕りや緩みに付いて>
・ 私達は、2012年12月の自公連立政権合意書に「決して奢ることなく、真摯な政治を貫くことによって成果を積み重ね、国民の本当の信頼を取り戻さなくてはならない」と明記しました。今こそ連立の原点に立ち返らなくてはならないと思います。
・ 政府と与党は、毎月「政府・与党連絡会議」を開催します。その際には、必ず政府も与党も「真摯にして丁寧な」政治の実現を確認しあったものです。しかし、いつの間にかその点が曖昧になったことを反省しています。
・ 政治家は、「信なくば、立たず」、「李下に冠を正さず」です。国民の信頼が政権運営の基礎であることを銘記すべきです。
以上
2019年12月12日
公明党顧問 漆原 良夫