平成28年10月19日
【死刑存廃論の現在 日弁連が「廃止宣言」
 
漆原良夫・党中央幹事会会長に聞く

 

 ―死刑廃止論議が動き出す可能性は?
漆原良夫会長 世論調査で約8割が死刑容認であり、国会でも死刑廃止論議は勢いがつかなかった。
そのような中、2014年3月、静岡地裁で袴田巌(はかまだーいわお)死刑囚に対する再審無罪の判決が出た。袴田さんは48年ぶりに自由の身となったが、検察の抗告で判決はまだ確定していない。一日も早い再審無罪の確定を心から祈っている。
重要なことは、これまでも死刑囚の再審無罪判決が4件あったことだ。そして今回の袴田さんの判決だ。死刑判決でも誤りが起こる事実を踏まえ、死刑問題に取り組みたい。
―これから深めるべき論点は?
漆原 袴田さんの件もあり、15年10月に与党内に刑罰諸問題に関する議員懇話会を立ち上げ、今年5月までに4回の議論をした。ここでは死刑だけでなく、刑事司法のあり方も展望しながら、刑罰に関する多様な問題を幅広く議論している。
このうち死刑制度については、国際的な批判もあり廃止すべきであるが、それに替わる終身刑を導入すべきだという意見が出た一方で、犯罪への応報、被害者感情を考えると死刑廃止が国民の理解を得るのは難しいのではないか、との見解も示された。
また、米国は死刑の執行方法について不断に検討している。日本も再検討の時期ではないかとの考えや、諸外国の調査研究を進めるべきとの提案もあった。こうしたテーマについて、さらに議論を深めることになっている。
―公明党のこれまでの取り組みは?
漆原 1998年の公明党全国大会の運動方針で「死刑制度は廃止を検討」と掲げ、2000年に終身刑導入プロジェクトチームを設置。15年5月に死刑問題に関する研究会を設置するなど議論を続けている。
―死刑廃止の根拠をどこに置くのか?
漆原 私はなんと言っても一番大事なのは生命の尊厳だと思う。これが大前提だ。その上で、間違った裁判で無実の人の生命を奪ってはならないという視点が大事だ。
裁判は「神ならぬ人間のすること」である以上、誤判は避けられない。間違った死刑判決を完全に防ぐ手立てがない以上、私たちはそれでも死刑を容認するのか、それとも廃止するのかの二者択一の判断を迫られる。
犯罪被害者の遺族の無念さは痛いほど分かる。しかし、刑罰の名目で無実の人の生命を奪うことは、国家として取り返しのつかない過ちを犯すことになると思う。




(平成28年10月19日付け公明新聞より転載)