政府は2日午後、臨時閣議を開き、事業規模28兆1000億円の「未来への投資を実現する経済対策」を決定した。これに先立ち、政府は同日午前、首相官邸で開かれた政府・与党政策懇談会で対策の内容を提示し、自民、公明の与党はそれぞれの党内手続きを経て、同日午後の政策責任者会議で了承した。対策には、7月22日に政府に提出した提言など公明党の主張が随所に反映。保育・介護の充実など1億総活躍社会実現を加速する施策や、「21世紀型インフラ整備」に向けて国が民間事業に低利融資する財政投融資を活用することなどを盛り込んだ。
公明の主張 随所に反映 無年金対策や消費喚起
政府の経済対策の規模政府・与党政策懇談会で、安倍晋三首相は経済対策について、「当面の需要喚起だけでなく、民需主導の持続的な経済成長と『1億総活躍社会』の着実な実現を進めていきたい」と強調。終了後、公明党の山口那津男代表は「力強い未来への展望が開ける経済対策になった」と評価した。
約28兆円の事業規模に対し、国・地方の歳出額は7兆5000億円。秋の臨時国会に提出する2016年度第2次補正予算案や17年度当初予算案などに計上する予定だ。その財源に関して、政府・与党は赤字国債を発行しない方針。
総活躍関連では、消費税率10%への引き上げによる税収増分で実施する予定だった年金受給資格期間短縮(25年→10年)について、「無年金の問題は喫緊の課題」として、税率引き上げを待たずに17年度中に確実に実施する方針を示した。
保育・介護の受け皿拡大や、保育士・介護人材の処遇改善については「17年度当初予算に計上し、かつ、継続して実施する」と明記。障がい福祉人材の処遇も、検討過程での公明党の指摘を受け「介護人材と同様の考え方に立って対応する」とした。給付型奨学金の創設や無利子奨学金の拡充のほか、災害時の避難所となる学校施設の耐震化・老朽化対策なども盛り込んだ。
インフラ整備では、外国人観光客4000万人時代に向けた大型クルーズ船のための港湾整備や公衆無線LANの利便性向上のほか、バリアフリー化や駅のホームドア、上下水道など生活密着型インフラの整備なども打ち出した。
一方、消費喚起に向けては、雇用情勢が安定的に推移していることなどを踏まえ、雇用保険料の時限的な引き下げを17年度から実現するとした。消費税率が5%から8%に引き上げられたことを受けて低所得者を対象に支給されている「簡素な給付措置」については、従来と同様の対象者約2200万人に、10%への引き上げまでの2年半分(1人1万5000円)を一括支給することとした。
公明党や経済財政諮問会議の民間議員などが主張してきたプレミアム付き商品券・旅行券の発行に関しては、「これまでの消費喚起策の効果を検証し、今後の在り方を検討する」と検討課題に位置付けた。