平成22年8月17日
検証 ねじれ国会
 
検証 ねじれ国会/前回は最悪 民主の政局優先で国政停滞/国民生活が混乱/経済・外交に悪影響

 
・ガソリン価格が乱高下
・雇用・金融対策に支障
・日銀総裁が20日間空席
・国際貢献が中断・遅れ
 民主党政権は先の参院選大敗で、参院での過半数を失い、戦後5回目の「ねじれ国会」となった。そこで、民主党の横暴な対応が相次いだ前回のねじれ国会を検証するとともに、公明党の
漆原良夫国会対策委員長に今後の国会運営のあり方などを聞いた。
 『戦後、ねじれは5回目』
 2007年の参院選でも、自民、公明両党の与党が過半数を下回り、戦後4回目の「ねじれ国会」が生じた。参院第1党となった野党・民主党は政局を優先した国会対応に終始し、09年の政権交代まで、内政と外交の両面で政治の停滞をもたらすことになった。
 なかでも国民生活に大きな混乱を招いたのが、ガソリン税の暫定税率をめぐる問題だ。08年2月末、同税率の維持を含めた税制改正法案が参院に送付されたが、即時廃止を主張する民主党は1カ月以上も審議を放棄。例年なら3月末までに成立する税制改正法案が一度も審議されないまま4月1日を迎え、暫定税率の期限切れによってガソリン価格が1リットル当たり数十円、値下げされた。
 4月に入り民主党はようやく審議に応じたものの、賛否の結論を出さなかった。このため、自民、公明の与党は4月末、衆院から参院に法案が送られてから60日以内に採決しない場合は否決したものとみなす憲法の規定(みなし否決)により、衆院で税制改正法案を再可決して暫定税率を回復させた。
 しかし約1カ月の間にガソリン価格が乱高下して国民生活が混乱。税制改正法案の成立が遅れたことで、地方財政にも大きな影響を及ぼした。
    ◇
 民主党が参院で主導権を握ったことで経済にも悪影響を及ぼした。08年3月、政府の日本銀行総裁人事案に対し、「まず不同意ありき」の強硬姿勢で不同意を連発。戦後初めて日銀総裁ポストが20日間空席となる異例の事態を招き、日銀副総裁人事も2人のうち1人が欠員の事態が約半年間続いた。その結果、「(日銀への)市場の信認を大きく低下」(読売)させた。
 米国発の金融危機後の08年11月には、中小企業の資金繰り対策となる金融機能強化法改正案が衆院を通過したが、参院で民主党が法案審議を引き延ばし、中小企業への救済が遅れた。
 さらに、09年度第2次補正予算案に対して民主党は、審議を引き延ばした揚げ句、採決にも応じなかった。国民生活を守るための中小企業支援、雇用対策などが盛り込まれた同予算案まで政争の具にする姿勢は、「国民生活が第一」との党の看板が偽りであることを証明した。
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 外交・安全保障の面でも、海上自衛隊によるインド洋での給油活動を継続する法案に対して、07年秋の臨時国会で民主党は審議引き延ばしと採決先送りに終始。給油活動の期限が切れ、補給艦が帰国する事態となり、活動の再開まで3カ月以上の空白が生じた。
 アフリカ・ソマリア沖などでの海賊行為への対処のあり方を定めた法案では、民主党は参院での審議を遅らせた上、党内意見がまとまらず反対。同法案は参院で否決され、衆院での再可決によって09年6月に成立した。
 日本の国際貢献策が、民主党の党利党略で中断したり、実施が遅れ、国際社会から信頼を損ねる事態を招いた。
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 今回のねじれは戦後5回目となるが、ねじれが政治の停滞を生むとは限らない。与野党が「『ねじれ』を生かし、国益と国民の利益に結びつく政治」(産経)を行えば、論戦重視の国会も可能になる。先の臨時国会では歳費返納法が全会一致で成立し、「熟議の可能性」(毎日)を示した。ねじれ下では「合意形成の道を探る」(読売)努力が欠かせない。
 『民主は合意形成の努力を/法案への賛否 公明は「理念」もとに判断/
漆原良夫国対委員長に聞く』
 ――先の臨時国会を振り返って。
 漆原国対委員長 野党側が強く求めた予算委員会の開催を勝ち取り、公明党が主導して国会議員歳費の自主返納法を成立させたことは、大きな成果です。
 ただ予算委では、9月に民主党代表選を控えて失点を避けたかったのか、菅首相はあいまいで“逃げ”の答弁に終始しました。
 ――2007年参院選後の前回の「ねじれ国会」では、民主党の全面対決の姿勢が目に余りました。
 
漆原 まさに国民生活を考えない政局至上主義でした。日銀総裁人事やガソリン税などがいい例です。「ねじれを利用して与党を困らせ、政局にしよう」と徹底していました。
 ――今度は攻守所を変えて、民主党が政権運営の難しさに直面しています。
 
漆原 民主党に求められているのは、誠実に野党と法案を議論することです。相手の立場を尊重して合意形成を図り、国会の意思を示していこうとの基本姿勢になってもらいたい。先の通常国会のような、少数意見は聞く必要ない、多数決で何でもできるという“数の横暴”はすべきでない、というのが参院選での民意ではないでしょうか。
 ――参院で野党が反対すれば法案は一本も通りません。
 
漆原 与野党を問わず、法案への賛否に重い責任を問われる国会になったといえます。法案の賛否については、国民生活に重大な影響を与えるため、説明責任を尽くさなければなりません。
 ――公明党はキャスチングボートを持っています。
 
漆原 連立や部分連合との話もありますが、そんな問題ではありません。法案ごとに、国民生活に良いもので、わが党の理念にかなうなら賛成し、そうでないなら修正を求める。修正できないなら反対する。これを基本に対応したいと考えています。
 ――秋の臨時国会にどう臨みますか。
 漆原 公明党が提出した歳費の日割り法案や政治家個人の監督責任を強化する政治資金規正法の改正は、何としても成立させたい。さらに、「政治とカネ」の問題に関する予算委の首相答弁は、鳩山、小沢問題は「辞任でけじめをつけた」と鳩山前首相の時より発言が後ろ向きでした。この点も徹底追及していきます。
 景気対策も大きなテーマになってきており、論戦を挑んでいきます。
 『「ねじれ」とは』
 『参院で与党少数 野党協力なくして法案成立せず』
 「ねじれ国会」は、与党が参院で過半数の議席を持たず、衆参両院で多数派が異なる状況を指す。
 このため、一般の法案を参院が否決、または衆院通過から60日以内に議決しない場合、衆院が3分の2以上の賛成で「再可決」すれば法案は成立するが、今の与党は衆院で3分の2の議席を持っておらず、野党の協力なくして法案成立はできない。
 首相指名や予算案、条約は憲法により衆院の優越規定があり、参院で否決などされても衆院の意思が国会の意思となる。予算執行に必要な関連法案は一般の法案と同じ扱いだ。

(平成22年8月14日付け公明新聞より転載)