平成21年12月1日
大詰め迎えた臨時国会
 
大詰め迎えた臨時国会

 
 鳩山政権に対する初の国会論戦である臨時国会が大詰めを迎えています。同政権が打ち出した2009年度補正予算の3兆円規模の執行停止や経済財政運営などに対し、公明党は国民生活を重視した論戦を活発に展開してきました。今国会における公明党の論戦の成果や国会対応などについて、斉藤鉄夫政務調査会長、漆原良夫国会対策委員長に聞きました。
 『斉藤鉄夫政調会長に聞く』
 『返済猶予法案に賛成へ』
 『公明が推進/肝炎法案 原爆症救済法案の成立で合意』
 ――今臨時国会は鳩山政権に対する初の論戦でした。
 斉藤政調会長 もう一度、公明党の立党の精神に返ってスタートしようと、国会議員全員が緊張感を持って論戦に臨みました。
 「出前政調」などで党幹部が現場の最前線を歩く中、地方議員や党員の皆さまから伺った“地域の声”を、国会議員が衆参両院の各委員会で取り上げました。例えば、私は岐阜県の出前政調で「2009年度補正予算の凍結でドクターヘリが整備できない」との声を聞き、衆院予算委で政府をただしました。現場主義の公明党らしく、生活者の声を国会論戦に反映させることができたと思っています。
 ――すべての肝炎患者を救済する「肝炎対策基本法案」や原爆症認定訴訟の原告救済の基金を創設する「原爆症救済法案」が与野党合意で成立する予定です。
 斉藤 いずれも公明党が連立与党時代から主導してきました。26日の両院議員団会議であいさつされた薬害肝炎全国原告団の山口美智子代表の「(公明党は)ずっと見守ってくれた」との言葉がそれを物語っています。民主党が議員立法の原則禁止方針を示す中、公明党は「命にかかわる問題は党派を超え最優先すべきだ」と訴えました。
 ――「中小企業金融円滑化法案」(返済猶予法案)への公明党の対応は。
 斉藤 中小・零細企業の心をくみ取った法案として、方向性については公明党も賛意を示してきました。ただし、この制度を利用した企業が、将来、金融機関から不利な扱いを受けることがないように国会審議を通じて確かめる必要がありました。その審議もせずに衆院で強行採決されたことは極めて遺憾です。
 この法案が強行採決された衆院本会議を公明党が退席したことで、法案そのものに反対しているかのような誤解を与えたことは非常に残念です。あくまで「与党の強硬な国会運営は、議会制民主主義の破壊につながる」という声を上げたものです。その後、与野党協議で、参院では十分な審議を行うことが約束されました。これを受け、同法案に賛成の方針を決めました。公明党は、中小企業が不利益にならないための付帯決議を付すことも提案し、27日の参院財政金融委員会で採択されました。
 ――09年度1次補正予算の執行停止について。
 斉藤 09年度1次補正予算のうち執行停止とされた約3兆円分は、10年度予算案の概算要求でその多くが“復活”しています。それでは、民主党が執行停止の理由を「不要不急でムダだから削った」としたのはウソだったことになります。単に、“前政権の実績だから否定したい”だけで、国民生活を全く考えていなかったのは明らかです。
 これでは、予算の執行を半年先に引き延ばしただけで、景気をさらに冷え込ませた鳩山政権の責任は重いと言えます。菅直人副総理(経済財政担当相)は、執行停止によって「国内総生産(GDP)を0・2%引き下げた」と認めています。
 ――経済成長戦略なき鳩山政権をどう見ますか。
 斉藤 日本の経済を元気にする以外に解決策はありません。ムダ削減だけで、全く経済成長戦略を示せない鳩山政権にとっては、家計を刺激して消費を促そうとする「子ども手当」「高速道路の無料化」くらいしかありません。しかし、多くの経済学者が「経済の見通しも示せない政権下では、消費に回らないだろう」と指摘しています。公明党は、成長戦略を示す2次補正予算案を今すぐ編成するよう主張していますが、何ら対応がないのが現状です。
 ――「事業仕分け」をどう評価しますか。
 斉藤 鳩山政権からは経済成長戦略や安全保障、科学技術・文化芸術振興などの基本戦略そのものが見えてきません。政府が財政再建の中期プログラムや成長戦略を明確に示さないまま、事業の要・不要まで含めて判断しています。これは基本戦略のない乱暴なやり方です。
 あたかも自分たちの要求で膨らんだ概算要求を、自分たちでムダを削減したように見せる“自作自演のパフォーマンス”と映ります。
 事業仕分けは公明党が最初に主張し、法律に規定したものですが、本来の在り方は、仕分け人の立場・位置づけを明確にして概算要求の前段階で、「これは民間に、これは地方で、これは廃止する」とじっくり検討すべきものと考えます。
 『
漆原良夫国対委員長に聞く』
 『景気・経済への対策急務/党首討論早期実施を「天下り」の定義変えた民主』
 ――これまでの鳩山政権をどう見ますか。
 
漆原国対委員長 鳩山政権は、マニフェスト(政策綱領)の財源探しに必死で、前半は09年度補正予算の執行停止に、後半は事業仕分けに忙殺されています。しかし、デフレ宣言がされ、政治が一番に取り組むべき課題は「急激な円高をどうするか」など景気・経済への対応です。それがなおざりになっています。今、国民が一番困っていることを議論し、早急な景気・経済対策を講じていく必要があります。
 ――20日未明の衆院本会議で中小企業金融円滑化法案が強行採決されましたが、「公明党は、なぜ退席したのか」との声もありました。
 漆原 公明党は同法案に反対なのではなく、基本的に賛成です。しかし、採決の前提として法案の問題点を議論するための十分な審議が必要です。
 当初、与野党間では20日の採決を決めていましたが、民主党は急きょ19日の委員会採決と本会議への緊急上程を要求しました。3日間の審議日程を1日半で終わらせようというのです。これは、野党の言論を封殺する「民主党の“ご都合主義”」で、同法案の審議時間を不当に奪う行為でした。
 巨大与党の数による横暴に対抗し“議論の場”を確保するには、残念ながら退席して国民にアピールするしか手段がありませんでした。仮に、公明党が本会議に出席していたら、与党は「公明党も出席して円満採決した」と言ったでしょう。出席すれば、与党に利用されます。そうした横暴を国民に訴えるため、公明党はやむを得ず本会議採決を途中退席したのです。この点はぜひ国民の皆さまにご理解いただきたいと思います。実際、公明党が退席したことで、マスコミも一斉に与党の強行採決を批判し、民主党も軟化しました。その結果、補充質問の形で審議時間を確保することになったのです。
 ――民主党は「脱官僚」「天下り根絶」を掲げていましたが。
 漆原 野党時代に民主党は「官僚依存、天下りだ」と日銀総裁の人事案に反対し、3週間も空席となりました。しかし、政権を取った途端、日本郵政社長に旧大蔵事務次官を、さらに人事官には前厚生労働事務次官を起用し、天下りに対する態度を一変させました。
 さらに重大なことは、政権を取ったら「天下り」の定義まで変えてしまったのです。政府の新たな定義では、政務三役による天下り人事や官僚OBによる役職の“たらい回し”がやり放題になってしまいます。この点は今後、厳しく検証し、追及する必要があります。
 ――党首討論が一度も行われていません。
 
漆原 異常な事態です。鳩山首相には、景気・経済対策、外交・安全保障や自身の政治資金問題など、国民の前で明らかにしなくてはならないことが山積しており、国民に自らの考えを示す責務があります。党首討論を行わずに今国会が終わったならば、“鳩山疑惑隠し”といわれ、首相の大きな汚点になるでしょう。

(平成21年12月29日付け公明新聞より転載)