平成14年3月2日

予算委員会にて質問(平成14年2月21日)
 
低すぎる日本の損害賠償額
   〜〜〜 予算委員会にて質疑 〜〜〜


★私は昨日、2月21日、衆議院予算委員会で、「報道による人権侵害に伴う名誉毀損とその救済」に関する質問を行いました。

★我が国の場合、名誉毀損に対する損害賠償額が、多くの判例で50万円〜100万円の低い賠償額にとどまっているのが現状です。米国では1億円を超えることも少なくありません。(別表参照)
 また、一部マスコミでは、100万円程度の損害賠償は必要経費とされているとも言われています。
過去に松本サリン事件の被害者である河野義行氏がうけた事実無根の報道のように、善良な市民の人権が、商業主義的な一部マスメディアの報道で侵害されるような事態を許してはなりません。

★さらに、刑事裁判でも名誉毀損罪で実刑を受けた例は、平成10年度で、被疑者359人中わずか3人と、1%にも満たないもので、前述の少ない損害賠償額とともに、全く抑止力として機能はしていません。これでは、司法の信頼すら失いかねません。
 これに対し、森山法務大臣は「法的救済は十分でなければならない。実効的なものになるように検討したい」と今後の検討を約束しました。


事件名 事案 損害額(内訳)
ウェラー事件 原告=古物商
被告=テレビ会社
  ・美術館に売却した燭台が
   盗品等であると放送
合計 230万ドル(約2億7600万円)
 ・精神的損害 100万ドル(約1億2000万円)
 ・評判損害    80万ドル(約9600万円)
 ・評判推定損害 50万ドル(約6000万円)
 ・懲罰的損害   なし
ソマー事件 原告=女優
被告=情報提供者
  ・原告が破産状態にあるとの
   記事掲載
合計 330万ドル(約3億9600万円)
 ・填補損害   200万ドル(約2億4000万円)
 ・懲罰的損害 130万ドル(約1億5600万円)
クァワー事件 原告=ジャーナリスト
被告=雑誌社
  ・原告がケネディ氏暗殺犯で
   あるかのような記事掲載
合計 117.5万ドル(約1億4100万円)
 ・評判損害   10万ドル(約1200万円)
 ・精神的損害  40万ドル(約4800万円)
 ・推定損害   17.5万ドル(約2100万円)
 ・懲罰的損害  50万ドル(約6000万円)
※1990年代に米カリフォルニア州内における名誉毀損事件の連邦裁判所、州裁判所の損害賠償認容事例



「現行制度でも高額化可能」
★上の表は、1990年代に米カリフォルニア州内における名誉毀損事件の連邦裁判所、州裁判所の損害賠償認容事例です。
 米国法制では、名誉毀損に対する損害賠償は、
  @「填補(てんぽ)損害賠償(現実に生じた損害を穴埋めする賠償)」
   つまり、精神的苦痛に対する損害賠償、評判低下に対する損害賠償、推定損害賠償など
  A「懲罰的損害賠償(悪性の高い行為に対する制裁としての高額の損害賠償)」
 に分かれます。
 この事例でもわかるとおり、填補損害賠償(我が国と同じ考え方の部分)でも2億円レベルの損害額が容認されています。従って、私はこのようなメディアによる人権侵害を抑止するために懲罰的損害賠償制度を導入しなくても、我が国の現行法制度で米国並みの高額な賠償額を容認することは充分に可能であると考えており、今回もそのことを強調しました。
 これに対し森山法務大臣から「わが国制度で高額な損害賠償はあり得る」との答弁を頂きました。
また、房村民事局長も「制度としては同じで、理論的には高額な賠償があっておかしくない」との認識を示しました。


「国会質問での名誉毀損は国会として回復措置を」
★事実に反した報道をもとに行った国会質問が、放送やインターネットで発信され、さらに国会の会議録として保管・公開されています。
  国会質問等で指摘されたことが、後日に裁判等で事実無根と確定した場合は、国会として何らかの名誉回復手段を講じるべきであり、メディア時代の国会審議のあり方などについて議会制度協議会などで検討すべきであると強く主張しました。
  これに対して谷福丸衆議院事務総長からは「テレビやインターネットを通じて審議が瞬時に家庭に届く状況になり、論議を深めていく問題。国会議員には免責特権があるが、ややもすればプライバシー侵害の恐れも生じる。一般人の名誉回復をどうするか、議会とメディアの関係などについて議会制度協議会で論議していただければ大変結構だと思う」と、今後論議を深めていくべき問題であるとの答弁を頂きました。

★今回の私の質問に対して、予算委員会の各党議員から、与野党を越えて拍手喝采が起きました。それだけ、この「メディアによる人権侵害」が社会問題化していると、深く実感するとともに、今後、損害賠償額の米国並み引き上げ等の実効的な制度実現により、人権侵害・名誉毀損の抑止に向け尚一層の努力を決意致しました。