令和7年2月12日
【令和7年第1弾
 
― 民間人の国会招致は全会一致の慣例 ―

 

               記
〇新年明けましておめでとうございます。本年が、皆様にとって幸多き年になりますよう心よりお祈り申し上げます。
アメリカのトランプ大統領の就任によって、世界の状況は先行き不透明になってしまいました。日本の政治もまた、自公政権が「少数与党」になってしまい、予算案も重要法案も、野党の協力が無ければ成立させられず、何時、内閣不信任が可決されるか分からないという、誠に不安定な政治状況となりました。
 日本丸は、「海図なき海」に船出をしました。与党は「寛容と忍耐」の精神で、真摯な国会運営と丁寧な説明を尽くすことによってこの難局を乗り越えてほしいと願っています。

〇安倍派会計責任者松本淳一郎氏の参考人招致の経緯
・自民党安倍派の裏金問題について、昨年3月衆・参両院の政治倫理審査会が開催されました。審査会では、裏金の還流が「何時、誰が、どのような経緯で始めたのか」について質疑が集中しましたが、安倍派の事務総長経験者4名を含む安倍派幹部は、いずれも「知らない」「自分は関係していない」と関与を否定しました。
 しかし、派閥の運営を主導する立場にいた安倍派幹部の「知らぬ、存ぜぬ」の説明には、多くの国民が不自然さを感じていました。

・そんな折、昨年6月18日、旧安倍派の会計責任者の松本淳一郎氏は、自身の政治資金規正法違反事件の公判廷で、安倍派の裏金還流について「一度中止が決まった後、幹部議員が復活要求し、再開された」と政治倫理審査会での安倍派幹部の供述と明らかに異なる供述をしたのです。

・将に「爆弾発言」です。「真相究明のため、松本氏を国会に呼べ!」と国会は大騒ぎになりました。そして1月30日、衆議院予算委員会は、松本淳一郎氏の参考人招致を、野党の賛成多数で議決したのです。
衆院予算委員会で多数決により参考人招致を議決するのは、実に51年ぶりの「異例」の出来事でした。

・自民党は、この採決に「反対」をしましたが、公明党は採決前に「退席」をしました。
 後述の通り「民間人の国会招致は全会一致」という原則は、50年間も国会自身が守り続けて来た慣例です。この慣例を破るべきではないと考え、公明党は議決に加わらず退席したのです。

〇衆議院予算委員会の議決は、次の2点で将来に禍根を残します。
・その一つは、「民間人の国会招致は全会一致」という国会の慣例を無視したものです。
 国会招致は、国政調査権の発動としてなされます。しかし、国会に呼び出されて、証言を求められる民間人にとっては大変な負担になります。社会的に地位の高い人でも、いざ、証言席に立たされて「宣誓書」に署名を求められると、指が震えてうまく文字が書けないという姿がテレビに映し出されます。その精神的負担は、想像に難くありません。加えて昨今は、SNSの時代です。氏名が公表されることにより、本人だけでなく家族に係る重圧にも十分配慮する必要があります。
国会が国政調査権を行使するにあたって「国民に過度な負担をかけてはいけない」との、国会の良識に基づいて自らの権限を自制したのが全会一致の慣例なのです。
 残念ながら、今回の議決によって50年間遵守されてきた国会の自制は破られました。今回の議決が新しい「先例」となり、国民がその意に反して、多数決で国会に引きずり出され、政党間抗争の犠牲になることを恐れます。その意味で少なくとも、今回の議決は「先例としない」との各党間の合意がなされるべきと考えます。

・その第二は、野党が参考人招致問題を予算審議に絡め「参考人招致の議決をしなければ予算審議に入らない」と予算審議を質に取った手法です。これこそ、数の横暴であり理不尽な手法と非難されなければなりません。

〇自民党に望むこと
 先に述べた通り、パーティー券収入のノルマ超過分の還流について、旧安倍派の元会計責任者の松本淳一郎氏は、自身の刑事裁判の公判廷で「一度中止が決まった後、幹部議員が復活要求し、再開された」と明確に供述しているのです。この供述は、事務総長を含む安倍派幹部の政倫審での説明と明らかに異なる重大な供述です。
何故、自民党は再調査をし、国民の前に真実を明らかにしようとしないのか。全く理解に苦しみます。
自民党の「裏金問題」に対する国民の不信は、深刻です。国民の信頼を回復するためには、不都合なことを「隠す」よりも自ら「膿」を出す覚悟が必要です。
最後に、国民感覚に最も近い石破総裁には、今こそ「石破総裁らしく」自浄能力を発揮し、「火の玉」となって自民党改革の先頭に立ち、真相の解明に尽力して頂きたいと切望します。


2025年2月12日
公明党元国会対委員長 漆原 良夫