令和4年3月17日
【第5弾
 
旧優性保護法は、憲法違反
上告を断念し、1日も早い被害者の救済を!

 

★3月11日、東京高裁は大阪高裁に続いて画期的な判決を言い渡しました。
 それは、旧優生保護法の下で不妊治療を強制された人たちが国を訴えた裁判で、この法律が憲法に違反するものであると判断した上で、国に賠償の支払いを命じたのです。

★旧優生保護法は、「不良な子孫の出生を防止する」ため、遺伝性とされた病気や知的障害のある人に、不妊手術を強いたのです。
 この法律による不妊手術は、昭和23年に施行されて以来、1996年に現在の母体保護法に改正されるまで続きました。この間48年間! 実に2万4991人の国民が不妊手術を強いられ生殖機能を奪われたのです。

★大阪高裁は、旧優生保護法につき「特定の障害がある人などを一律に『不良』であると断定すること自体、非人間的で、個人の尊重という憲法の基本理念に照らし容認できない。子を産み育てるかどうか意思決定をする自由を侵害し、明らかに憲法違反だ」と判断しています。
 また、東京高裁も、「旧法は、差別的思想に基づき、極めて非人道的。憲法違反は、明らか。」と判断しました。

★この裁判で最大の争点は、不法行為の時点から20年が経過すると損害賠償請求権が消滅するという民法の「除斥期間」の適用の可否です。
 除斥期間の開始は、国による不法行為がなされたとき、即ち不妊手術がなされた時です。原告の皆さん方にとっては、何十年も前の話ですから「除斥期間」の壁が大きく立ちはだかります。
 事実、これまでに言い渡された地方裁判所の判決6件中5件は、民法に規定された「除斥期間」を適用して原告の訴えを退けています(残りの1件は、不妊手術が行われたことが認定できないというもの)。

★しかし、大阪高裁は「除斥期間の適用をそのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反する」と判断し、東京高裁もまた「除斥期間の適用は著しく正義・公平の理念に反する」として、除斥期間の壁を乗り越えたのです。
 両判決からは、法の根源に流れる正義・公平の理念に鑑み、原告らを救済するために出来うる限り手を差し伸べようとの強い意志が伝わります。

★東京高裁、大阪高裁の判決が出揃いました。今や、ボールは、政府と国会にあります!
もともと、優性保護法は、全会一致で可決成立した議員立法です。それなら、なおのこと「過ちては改むるに憚ること勿れ」です。上告を断念し、1日も早く被害者の救済を図られることを望みます。
                        以上

  2022年3月17日
   弁護士 漆原 良夫