「共謀罪」Q&A その2

そこが聞きたい/組織犯罪処罰法改正案 Q&A/再修正や丁寧な説明/与党、国民の不安払しょくに全力
 テロなどの組織犯罪を未然に防止するために「組織的な犯罪の共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が今国会で審議されています。共謀罪については、対象が分かりづらいなどの声が上がっていることから、与党は2度にわたって修正案を提出し、記者会見で丁寧に説明するなど、国民の不安払しょくに努力しています。同改正案のポイントを紹介します。
 『Q なぜ共謀罪が必要なのか』 
 『A 国連条約に基づき、テロなど組織犯罪の防止に国際社会が一致して取り組むため、国内法の整備必要』
 テロや麻薬取引、人身売買、殺人などの犯罪が世界的に深刻化しています。それに対し、国際社会が一致団結して防止に取り組んでいこうと、国際組織犯罪防止条約が2000年に国連で採択されました。
 同条約は、各国が組織犯罪を処罰するための法律として「組織的な犯罪の共謀罪」(共謀罪)をつくることを求めています。
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 テロ集団や暴力団、詐欺集団などによる組織犯罪は、組織の論理によって構成員が命令通りに動くため、犯罪実行の可能性が非常に高く、一度実行されると社会に多大な被害を及ぼします。そのため、計画の段階で犯罪を阻止しようというのが共謀罪の目的です。
 さらに、同条約では、国際的な組織犯罪の捜査や訴追における国際協力に関する規定が設けられ、締結国間での組織犯罪対策の協力を促進することとしています。
 こうしたことから共謀罪をつくるための国内法を整備することによって、国際的な組織犯罪から国民を守ることが期待されます。
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 しかし、条約に基づいて各国が足並みをそろえて共謀罪をつくらなければ、そのような助け合いができず、未整備国は、国際的な組織犯罪防止網の抜け穴になる恐れすらあります。
 現在、120カ国が同条約を締結し、G8国(主要8国)中でもカナダ、フランス、ロシア、米国、英国がすでに締結。ドイツとイタリアも国内手続きを終えるなど、日本以外は同条約を締結するための国内法整備を終えています。
 『Q 一般の人が対象になるのか』
 『A ならない。組織犯罪集団が共謀し、具体的な準備を行って、初めて処罰の対象に』
 国連の国際組織犯罪防止条約に基づいて政府が提出した、共謀罪の新設を柱とする組織犯罪防止法改正案では、共謀罪の対象が、拡大解釈されて一般の会社やNPO、市民団体までも対象にされるのではないかとの不安が出されていました。
 そこで、与党はそのような心配を払しょくするためにこれまで、対象団体を組織犯罪集団に限定するとともに、単なる共謀だけでなく、逃走経路の下見などの一定の行為があって初めて処罰できる修正案を2度にわたり提出してきました。
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 今月19日に出した再修正案では、民主党の主張にも配慮した上で、対象団体を「組織的な犯罪集団」と明記した上で、「共同の目的が長期5年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪を実行することにある団体」と、対象をより厳格にしています。
 さらに、国民の不安を解消するために「思想や良心の自由などを不当に制限するようなことはあってはならない」「労働組合などの正当な活動を制限することはあってはならない」との規定を盛り込みました。
 共謀罪の処罰に関しては、「犯罪の実行に必要な準備その他の行為が行われた場合」に限り対象とすることを明記し、共謀の段階から具体的な準備を行って初めて処罰の対象となるようにしています。
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 このように、与党修正案では対象団体と処罰の要件を明らかにしているため、例えば、サラリーマンの酒席での冗談話が共謀罪になることも、正当な活動をする団体が共謀罪の対象になることも、ありません。
 『Q 民主案はどうなのか』   
 『A 国連条約に違反する内容なので、成立しても条約締結ができない』
 民主党の修正案は、615に及ぶ共謀罪の対象犯罪の数を減らすべきとし、「5年超の懲役・禁固に当たる」犯罪に限定するよう求めています。さらに、国際性(越境性)を要件にするようにも求めています。
 しかし、民主党の主張する修正案は、国連の国際組織犯罪防止条約が求める「4年以上の懲役・禁固に当たる犯罪」(2条)と、「国際的な性質とは関係なく定める」(34条2項)との規定に反するものです。これでは、国内法を整備しても条約を締結することはできません。
 民主党は、条約の締結に当たって条約の特定の条項を制限する「留保」を付けるよう主張していますが、「(民主案は)条約の核心部分に反しているため、留保は難しい」(藤本哲也・中央大学法学部教授)と指摘されています。
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 日本の刑法体系になかった共謀罪の新設について、与党は国会における審議を慎重に進めています。それは、法律をできるだけ多くの人が納得できる内容にするためです。
 しかも与党は、民主党修正案のうち、条約に反しない部分を最大に取り入れて与野党共同の修正案にしようとも呼び掛けてきました。自民党と民主党の協議はこれまで10回以上に及んでいます。
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 しかし、民主党は国連条約に反する同党修正案に固執するのみで、共同修正を行うことも、与党の再修正案に対する対案を出すこともできないままでいるのが実情です。
 「できるだけ多くの人が納得できる法改正に」との与党の歩みよりに対し、民主党の不誠実さがあらわになっています。
(平成18年5月29日付け公明新聞より転載)