「共謀罪」について

組織犯罪処罰法改正案「共謀罪」の新設について/漆原良夫・党法務部会長に聞く
 麻薬取引やテロなどの組織犯罪の防止に向け、各国に取り組みを求めた国際組織犯罪防止条約の締結に必要な組織犯罪の「共謀罪」新設を目的とする組織犯罪処罰法改正案が今国会で審議されている。しかし、一般国民でも重大な犯罪を共謀しただけで処罰されるのではないかという誤った意見が出ており、与党はこうした誤解を解くため、4月21日に修正案を提出した。提案者の一人で公明党法務部会長の漆原良夫衆院議員に与党修正案のポイントを聞いた。

 『謀議の段階で未然に防ぐ』
 『与党修正案 対象を犯罪組織に限定』
 『国際条約の締結に不可欠』

 ――なぜ今、共謀罪の新設なのですか。
 漆原 国際的なテロ集団や犯罪組織によって人身売買や、麻薬取引、殺人といった重大犯罪が世界中で頻発しており、そのような犯罪に対し、世界全体で戦おうと協力体制を取り決めたのが、国際組織犯罪防止条約です。その条約が2000年に国連総会で採択され、署名国は147カ国、締結国は119カ国に上っています。日本の国会でも03年に自民、公明、民主、共産が賛成し、同条約を承認しました。この承認に基づいて政府は、同条約を締結するため、国内法に共謀罪を新設するための法案を策定したということです。
 ――なぜ、組織犯罪に対して共謀罪が必要になるのですか。
 漆原 それは、単独犯の場合と違って組織が犯行を決めた場合、犯罪の実行可能性が非常に高くなるからです。つまり、共謀段階と実行段階の間の結び付きが強いということです。だからこそ、組織犯罪を共謀の段階で未然に防ぐことが重要になります。
 ――政府案ではダメだったのですか。
 漆原 政府案に対しては、「一般の会社や市民団体の活動も共謀罪の対象になってしまうのではないか」との不安や、「犯罪の共謀をしただけで処罰することは、人の内心を処罰することになってしまうのではないか」との懸念が示されました。
 そこで、政府案に対する不安を払しょくするために、条約に反しない範囲で、与党が修正案を出したわけです。
 ――与党修正案のポイントは。
 漆原 第一のポイントは、共謀罪が対象とする団体を限ったことです。
 それは、「団体」の定義を「共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体」とし、犯罪組織といえるような団体の活動として行われるものである場合に限って共謀罪の対象となることを条文上に明らかにしました。
 これによって、暴力団や、振り込め詐欺、リフォーム詐欺などの詐欺集団、テロ集団といった明らかな犯罪組織だけが共謀罪の対象に限られるようになりました。
 修正案では、会社や労働組合などの正当な団体がたまたま犯罪行為を共謀しても、それだけでその団体が「犯罪を共同の目的にした団体」の範ちゅうには入りません。これは、私が修正案の答弁者として国会答弁で明言しています。
 共謀罪に反対する人たちの多くは、労働組合やNPO(民間非営利団体)などの正当な活動も共謀罪の対象となるのではないかと心配されています。しかし、与党修正案で正当な団体は共謀罪の対象外にしたのですから、その心配はなくなりました。
 そして、もう一つのポイントは、共謀罪の処罰条件として「共謀に係る犯罪の実行に資する行為が行われた場合」という要件を追加したことです。すなわち、共謀をしただけという内心の段階にとどまらず、さらに進んで実行に向けた外部的な行為が行われた場合に初めて処罰の対象となるということに限定をしました。
 例えば、殺人の共謀をして犯行現場の下見に行く行為や、犯行現場に赴くためのレンタカーを予約する行為などが考えられます。これによって「共謀罪は人の内心を処罰することになってしまうのではないか」との心配も払しょくされることになります。
 ――4月28日に民主党が出した対案をどう見ますか。
 漆原 民主案は、共謀罪の対象を、国境を越えた犯罪(越境性)に限り、さらに、「懲役・禁固5年以上」としています。
 しかし、国際組織犯罪防止条約は、越境性の要件を禁じ、4年以上の懲役などを科す犯罪を対象とするよう求めており、民主案は同条約に違反する内容です。
 これでは条約を締結できないので、立法する意味はありません。民主党は条約を承認したのに、それに反する案を出すのは自己矛盾も甚だしいと言えます。
(平成18年5月3日付け公明新聞より転載)